カオサンの夜

カオサン通り滞在4日目にしてそろそろ感覚的に慣れてきたので、カンボジア出発前の最終日は夜遊びに出かけようと思いたち、心を弾ませてゲストハウスを出た。ブロンズ美女とS○Xはできないにしても、挨拶代わりの熱いチューでもしてこようと意気揚々とパラダイスを目指す。時刻はまだ21時を回ったころだったが案の定、カオサン通り付近は人でごった返していた。元々コミュ症な俺は、素面ではこのノリについていけないと思いとりあえずコンビニで一番安いビールを買った。酔い始めればいい感じに雰囲気に乗れると思った。ビールを片手に(途中ケバブを挟みながら)カオサン通りを何回か往復する。いい感じに酔いも回ってきたころにクラブへ入ろうとThe clubの入り口へ近づくと段々と俺の耳に入る音も大きくなる。大音量で街中に音楽を轟かすスピーカーをもった老女性がこちらへ歩いてくる。次の瞬間、俺の目に衝撃が走った。彼女はきっと盲目だ。そしてあの音量のスピーカーをもって歩いてることからするときっと耳もそこまでよくない。彼女の姿を見た瞬間、顔から血の気が引いてくのを感じた。回り始めた酔いが一気に冷め、一瞬にして思考が冷静になる。思えばカオサン通りの店で騒ぎ倒しているのは9割方観光客で、道脇には遅くまで商売をする子供の姿。彼らはきっと夜は1番の儲けどきと教えられているのだろう。気分がクラブどころではないのでゲストハウスへと戻る。帰り道には道に寝込む子供を見た。付近に親らしき人が見当たらないためおそらく乞食なのだろう。近年発達しているタイ経済の支柱を担っているのは観光業であることは想像するに容易い。タイ人にも本当のおもてなしの心というのを見て欲しい。それは決して自らの生活を犠牲にしてお金を稼ぐことではないはずだ。4日間という短い滞在の中で見たものはタイという国のほんの一部分かもしれないが、この国の抱える問題の闇の部分を見た気がする。これを感じれただけでも今回の一人旅は大きな収穫となった。